AMASHIN'S BLAIR WITCH MIX
全曲解説

Side-A

1.Formentera Lady/King Crimson
英国プログレッシヴ・ロックの巨匠、クリムゾンの異色の4thアルバム「アイランズ」の一曲目に 収録されている10分にも及ぶ超大作。一聴すると中国音楽のような和やかな雰囲気の曲なのだが、 メル・コリンズが奏でるフルート、サクスフォーンの音色、そして幽霊のようなバックコーラス(それはあたかもエリー・ケドウォードが森全体を 呪いで覆い尽くしているかのようだ)などが加わり、身の毛もよだつ怪しげな曲へと変貌していく。

2.Mysterons/Portishead
マッシヴ・アタック、トリッキーとともにトリップ・ホップの始祖鳥と崇められるポーティスヘッドのライヴアルバム「PNYC」 からの音源。アマシンは失踪前、このライヴビデオを真夜中暗室でひとり、とり憑かれたように鑑賞していたという。 この暗黒の世界へトリップしていくような凄まじいまでの音世界は、不気味なるものにとり憑かれたアマシンの心情を煽り立て 、ブレアの森へと誘うには十分すぎる程の説得力を有している。「暗黒の天使」=ベス・ギボンズの歌声はレコーディングの それより妖美さを増しており、DJアンディ・スミスが刻み込むスクラッチ音は神経にギスギスとこたえる狂気の業だ。 そして後半のオーケストレーションとジョン・バゴットのドロロん閻魔くんの効果音にも似たギター音が奇妙な具合にシンクロナイズされ、 聴き手に一種異様な恍惚感をもたらすのである。
3.Pills/Primal Scream
これはこのテープの中ではちょっと意外な選曲だ。確かにバックの不安げなシンセ音や、「消えちまえ!」 と繰り返す歌詞などにはアマシンの運命を暗示するものが含まれているような気がするのだが・・・。 アマシン自身に罵倒を浴びせかけた自虐的選曲であろうか。彼らの大ヒットアルバム「EXTERMINATOR」に収録。 (しかし、このアルバムは2000年1月に発表されたのにこのテープに収められていることが大きな謎である。)
4.Eyes To Eyes, Hear To Hear/Morbid Angel
ここでようやくアマシン御用達のデス・メタルナンバーが登場。やはりモービッド・エンジェルを選んでいる。 アマシンが最高傑作と豪語する「Domination」の3曲目のミドルテンポナンバー。 このおぞましいリフ構成、トレイの歪みに歪んだギターの音色はあまりにサタニックであり、冒涜的だ。 デヴィッドの吐き出す言葉には、森羅万象を支配し尽くした魔神の尊厳さがあり、それはまるで 愚か者どもが奈落の底へと堕ちていく様を嘲り笑うかのようだ。
5.Planet Caravan/Black Sabbath
アマシンがこのテープにサバスの曲を収録することはごく当然のことと思われるが、2nd「Paranoid」 (アマシンはサバスの中でもこのアルバムを痛く気に入っており、以前彼はこのアルバムの 発行元であるテイチクが企画していたヘヴィメタル専門レーベル“メタル・マニア”のファンクラブ、メタル マニアシンジケートの会員であった恥ずかしい過去を持つ)の3曲目であるこのぼやけたような曲を敢えて 選んだのは少々意外である。恐らく空間を浮遊するかのような気味の悪さを内包したオジーのエフェクト 掛ったヴォイスにいいしれぬ神秘性を感じたのであろう。「俗悪」意外のパンテラのアルバムに興味のないアマシン も「悩殺」に収められているこの曲のパンテラヴァージョンだけは認めていたようだ。
6.ねないこだれだ/Cocco
曲のタイトルからして背筋が寒くなる。アマシンが敬愛してやまないCoccoの3rd アルバム「ラプンツェル」からのオドロオドロ系3大曲の1つ(あと2曲は「裸体」「ベビーベッド」)。 ピアノの乱れ弾き、ヴァイオリンの怪しい調べ、そしてあっちゃんの恨めし気な歌い方、こ、怖い・・・。 「ねないこだれだ」というタイトルは彼女が幼少の頃読んだお化けの絵本のタイトルからの由来だそうだ。 「夜、遅くまで起きてる子はエリー・ケドウォードに暗〜い森へ連れていかれちゃいますよ!!」 というあっちゃんの子供に対する戒めの声が聞こえてきそうだ。

7.Lostinwoods
なにやら3人の男女が口論となっているシーンのようだ。Lostinwoodsとだけタイトルが付けられている。 英語なので何言っているのか全然ワッカリマセーン!!

Side-B

1.春の海/人間椅子
モロブラック・サバスなイントロ、あまりにも不気味で怪しげな鈴木研一氏の ベース兼ヴォーカル。日本文芸のエッセンスとブリティッシュ・ロックを絶妙なセンスとテクニックで 融合させた日本を代表する今世紀最大のロック・バンド人間椅子の8th「二十世紀埋葬曲」からのドゥームナンバー。 人間椅子とアマシンの出会いはあまりにも運命的で(人間椅子奇談参照) 後のアマシンの陰鬱な人格形成に大きく影響を及ぼす要因ともなった。この曲のダークさがそれを大いに物語っている。
2.Play Dead/Bjrk
アイスランドの歌姫のデビューソロアルバム「Debut」のラストナンバー。
「ビョーキだね、ビョークは・・・ビョークだね、ビョーキは」とアマシンの繰り返し呟く様が脳裡に浮かんでくるようだ。

3.Black Magic Woman/Fleedwood Mac
アマシンがこの曲を曲のタイトルだけで選んだのだろうことは90%確実といえる。なぜならそのままだからだ。 名作「英國の薔薇」からの超名曲。ピーター・グリーンはまだ生きているのだろうか・・・。
4.Reaching Happiness, Touching Pain/Cathedral
嗚呼・・・く、暗すぎる。救いようがない。1st「この森の静寂の中で」というこれほどピッタリくる邦題もない 魑魅魍魎たるジャケットが印象的なアマシンが彼らの作品の中で最もよく聴いていたという アルバムからその中でも最高潮に陰雑を極めたこのラスト曲がチョイスされている。あくびを禁じ得ないスローテンポな曲調、 フルート、オルガンの音色が宗教的背徳性を彩る。そして「そんなに悲しい事があったの?」と質問したくなるような リー・ドリアンの嘆きに嘆くスクリームはあまりにも絶望的だ。足許で死に絶えた愛に唾を吐きかけ、苦悩という 陰謀を盲目に求めたアマシンは、果たして苦しみに耐え、幸福に至ったのだろうか?
5.Black Milk/Massive Attack
黒い牛乳・・・某乳業の牛乳を彷彿とさせるようなポイズニックなタイトル、「踊れないダンス・ミュージック」と呼ばれる ブリストル産サンプリング・ミュージックの元祖マッシヴ・アタックのクワガタジャケットが印象的な3rd「Mezzanine」からのチョイス。 確かに踊れません!!こんな暗い曲・・・。最初から最後まで殆ど規律を変えることのない図太いベース音の病めるループ、 その中でゲスト・ヴォーカリストのエリザベス・フレイジャーが、そのもの悲しげな透明感溢れる歌声で聴き手の精神に 孤独感をもたらしていく。例えばひとり樹海に迷い込んだ時のなんとも心細い心境がちょうどこんな曲の感じだ。
6.黒魔術
↑そのままやんけ!なんのひねりもありゃしねぇ。だが、あなどるなかれ。この曲(曲か?)はマインド・コントロールを 目的とした「Acid」という環境音楽CDの中に収録されているもので、その聴覚上聴きとりにくい音波、周波が人間の潜在意識に にもたらす影響はあまりにも不健康だ。サブリミナル効果として曲間に含まれている何語ともつかぬ人間のしゃべり声のようなものが 神経を逆なでにし、いやぁな気分にさせる。このテープの最後を飾るに相応しいといえば相応しいのだが・・・気分が悪くなった。