二十二枚の大アルカナと五十六枚の小アルカナの合計七十八枚からなる一組のカードであって
、ジプシーの占いやトランプ類似のカードゲーム(タロットはトランプの全身なのです)と
結びついた通俗的イメージによって知られています。
タロットはもともと歴とした一冊の本であり、それはモーゼ五書よりはるかに古い起源の、
おそらくきわめて神聖な書物なのだといわれています。
タロットがもとは一冊のまとまった本であったという言い伝えにはさまざまのヴァリエーションがあります。
イーデン・グレイの「タロットのための完全ガイド」という本によると、キリスト教の勃興とともに
教権による迫害を蒙った祭司たち(エレウシス密儀の司祭)が彼らの蒼古たる伝承を流浪のジプシー
に託し、密伝伝承に適わしい者だけ秘密を打ち明けるように命じたといいます。一体誰が流浪のジプシー
が秘伝書の護り手と思うでありましょうか?(いや、誰も思わない)しかも秘伝書はばらばらのカードの形
にばらして、迷信的な占いや遊戯用の明らかに無害な玩具のカムフラージュをほどこしてあるのだから、
擬装は完璧だったわけです。
タロットの起源に関するさらに面白いもう一つの伝説は、ローマ人に破壊されたアレクサンドレイアの
大図書館炎上の故事に関係があります。アレクサンドレイアの潰滅の後、古代伝承の中心地はアフリカの
フェズ(モロッコ)に移りました。この新しい世界の知的中心地に人びとは近隣からも遠国からも競って参じた
が、バベルの塔建設の際のようにさまざまの国語を話す人びとが一堂に会したために、共通語をこしらえて
相互伝達の便宜を図る必要に迫られました。こうして夥しい神秘的シンボルを内蔵した絵本が考案されたのです。
これらの象徴記号は道士からへ口づてに伝承されました。そして彼らはメッセージの秘密を護持するために、
後にこれらのシンボルを一見無害なカードに作り替え、真の意味を解読する能力のない愚かな人間には
賭事のゲームに使わせて満足させておいたというのでございます。
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